鉄道模型バー
華やかな衣装をまとった女性が行き交う大阪・北新地。高級クラブやラウンジに混じり、一風変わったバーがある。レストラン&バー「北新地鉄道恋道路(RE・TO・RO)」。店内では、ビジネスマンたちが、カウンターそばを走るNゲージの鉄道模型をうっとりと眺めながら、ウイスキーを傾ける。
JR北新地駅の近くにある店のドアを開けると、目の前には、鉄道模型がずらりと並んだショーウインドー。店内には、昭和天皇がご利用になった特別列車や0系新幹線から700系までの全編成など約600両あるという。店内は照明を落とし、大人っぽい雰囲気。
カウンターテーブルに接して、昭和40年代の町並みや田園地帯などを再現したジオラマが配置されている。敷かれたレールの長さは全長16メートル。カウンター内にいるバーテンダーの周囲を一巡するかたちで、模型列車が走る。
カウンターには、この模型列車を操縦することができるコントローラーがあるほか、店内の液晶テレビでは、オーナーの寺岡直樹さん(43)が昭和50年代に撮影した大阪・泉州地方の旧国鉄の映像などが流れている。
内側のライトが光る模型列車を眺めていると、なんとも癒やされる気分になるから不思議だ。女性をさそっても、いいムードを演出できるかもしれない。
「僕の近鉄特急、走らせといてよ」。電話で予約を求めてきた常連客の声だ。ボトルキープならぬ、「トレインキープ」ができるのだ。好きな鉄道模型を買って店でキープし、店内でいつでも走らせることができる。寺岡さんは「持ち帰るにはちょっと恥ずかしいというお客さまもいます」という。
来店する客たちは、鉄道好きのビジネスマン。大阪市天王寺区の会社役員の男性(49)は「一日中模型列車が走っており、自分の理想の部屋のよう。一度女性を連れてきてみたいね」。
店内では、アルコールやソフトドリンクのほか、「オリエントエキスプレス」などの名が付いた食堂車風のコース料理も楽しめる。
「恋道路」は、大阪市天王寺区で昨年2月にオープンしたカフェ「てつどう茶屋」(鉄カフェ)の姉妹店。鉄カフェはファミリー向けだが、恋道路は大人向け。それも団塊の世代だ。
店の入り口に飾っている機関車のレプリカプレート。機関車は、昭和50年から63年まで、旧国鉄の再建計画で、三重県内のドライブインに売却され、展示されていた。しかしドライブインが移転することになり、静岡県内の鉄道会社に譲られることになった。10年以上も展示されていた機関車は現在も現役で走っているという。
寺岡さんは、いったんは退いても復帰した機関車と、団塊の世代を重ね合わせて、「元気になって」と応援したい気持ちを込め、今月5日にオープンさせた。有力企業の社長や重役たちも訪れるが、そこでは仕事の話は忘れて、自分たちの青春時代の話に花を咲かせるという。(中島高幸)
■レストラン&バー「北新地鉄道恋道路(RE・TO・RO)」 月曜日~金曜日は午後6時~翌午前3時。土曜日は午後6時~午前0時。日曜日は正午~午後8時。日曜日は、チャージ料金の2000円はなくなり、カレーやハヤシライスなどのメニューが登場する。模型列車の運転などはチャージ料金に含まれる。問い合わせは、恋道路(TEL06・6457・0106)。
産経web(2007/06/21 17:25)